ヒイロくんの恋人 朝
ある朝、いつも寝坊をしないデュオがなかなか起きてこず心配になったヒイロはデュオの部屋を軽くノックし覗いてみた。するとベッドにデュオの姿は無く、着ていたシャツは布団の隙間からチラリと見えている。しかしデュオが外に出た気配はなくヒイロは首をひねりながら部屋を出ていこうとすると、ベッドの方から何やら音が聞こえてきた。
恐る恐る覗いてみれば布団がもぞもぞと動いていて、助けてくれ〜とか細い声が聞こえてくる。布団をめくりあげれば手のひら位の大きさのデュオがいた。
ヒイロはぜえぜえと肩で息をしたデュオを手に乗せてじっくり観察する。手に乗る物体はどこからどうみてもデュオのミニチュアで、さすがに服などは小さくならなかったのか真っ裸だった。
「どうしようヒイロ…」
何故かわからないが小さくなってしまった体にデュオは嘆くが、ヒイロは何か別の事を考えているのかじっとデュオを見たまま口を開こうともしない。それに焦れたデュオが親指を揺らしてヒイロを呼ぶがやっぱり無視されてしまう。今度は噛みついてやろうとしたその瞬間、いきなりヒイロが動きだし手が大きく揺れ落ちそうになる。
「うわっ危ねえよヒイロ!」
落ちないようにがっしりと指を掴み叫ぶデュオを無視してヒイロは、自室に向かい自分の裁縫道具を取り出すとデュオと一緒に机の上置いた。更にクローゼットを開け布を取り出すと裁断をし始める。今までヒイロの部屋に入った事があってもクローゼットの中までは見たことが無かったデュオは、洋服よりも幅をとっている色とりどりの生地の山に驚いた。
「とりあえずこれを着ていろ」
ヒイロの秘密が詰まっているようなクローゼットを覗いていたデュオにシャツとパンツを渡し、早く着ろと言わんばかりに視線を送る。いそいそと着てみれば今の体にピッタリなサイズだった。
「…お前って本当何でも出来るんだな」
呆れ半分で話しかければこんな事くらい出来て当然と鼻で笑われる。
「朝食が出来てる。食ったらサリィの所へ行くぞ」
「へいへい…」
1人勝手に物事を進めていくヒイロに何を言っても無駄だと知っているデュオは、文句を言わずにヒイロの手に乗り朝食の待つテーブルに向かえば、冷めてしまったスクランブルエッグにベーコンそれとトーストがきれいに盛られていた。ヒイロはデュオを置くと自分も席に着きとっとと食べ始める。昨日までは軽々と持っていたフォークが自分と同じくらいの大きさもあり、デュオは持ち上げようと頑張るが少し宙に浮いただけで重くてすぐに置いてしまう。デュオがどうやって食べようか悩んでいるとそれに気が付いたヒイロがトースト小さくちぎって渡してきた。小さくと言ってもデュオの顔くらいある物を両手で抱え込むように取りかぶりつく。その姿を見たヒイロが箸を止め何を思ったか席を立ち部屋を出ていってしまった。おいてけぼりにされたデュオはパンを抱えたままヒイロが消えていった方を見ていた。
それから数十分、ようやく戻ってきたヒイロの手には茶色い布が握られていて、それをデュオに差し出してくる。どうやらそれを着ろという事らしく、なかなか受け取らないデュオに焦れたヒイロが着せ替え人形の如くデュオに着せていった。全身茶色でお腹は肌色お尻の所には大きなくるりと巻いた尻尾がついてフードには耳までついたかぶりものだった。
「何だよこれ…」
脇腹の部分をつまんで顔を眉を寄せているデュオにさっきまで食べていたパンを渡すと、ヒイロはどこからかカメラを取り出して写真を撮り始める。
「思った通り…似合ってるぞデュオ」
不満げな顔をしてデュオが口を尖らせているが、ヒイロは満足げな表情でカメラを置くとデュオの頭を軽く撫でた。
「似合ってても嬉しくないしっ」
ヒイロの指をていっとはらうとそっぽを向いてしまう。そんな仕草に苦笑してすくうように持ち上げると嫌がるデュオをヒイロがぐりぐりと指で撫でまわす。
「そうか?凄く可愛いぞ」
いつも仏頂面のヒイロが珍しく柔らかな笑みでおでこにキスを贈る。するとデュオの顔がみるみる赤くなっていき、ヒイロがそんな言うなら…とさっきまで嫌がっていたのが嘘のような表情をしてされるがままに撫でられ続けていた。
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