惑の制服




休暇があけて自分のロッカーへ行ってみれば扉に一枚の紙が貼ってあり、中に入っていたはずの制服は無くなっていた。デュオは紙を乱暴に剥がすとぐしゃぐしゃに丸めて投げつけると、1人さっさと着替えていたヒイロの頭に当たり跳ね返る。
「ゴミはきちんと捨てろ」
紙が当たった事は特に気にせず注意する。
「俺は帰る!こんなとこ辞めてやる!」
怒って帰ってしまいそうなデュオの腕をヒイロが掴みそれを阻止して側に引き寄せた。
「レディに呼ばれている。早く行かないとまた怒られるぞ」
「離せよっこの馬鹿力!俺は帰るんだ!」
掴まれても暴れているデュオに何を言っても無駄だとヒイロは腕を引っ張って歩き始める。廊下に出ても騒いでいる2人に自然と人の目が集まりとても目立っているのだが、デュオはヒイロの腕から逃げるのに必死になっているからかその事に気がついてはいなかった…。

ノックを2回、返事を待たずにドアを開ければそこにはレディとサリィが待っていて、部屋には何故か制服と思われる物が何着も置いてあった。
「あらデュオかわいい格好しているわね」
入ってきた2人を見たサリィがにこにこしながらデュオに話しかけるとすかさず反論してくる。
「俺が好きで着てるわけじゃないぜ!俺は嫌だって言ってるのに、ヒイロがパジャマを脱がせて無理矢理着せてきたんだ!」
デュオの言葉に沢山の制服に机を服に占領されしかめっ面になっていたレディの顔が更に歪んだ。一方のサリィは、デュオってきちんとパジャマ着て寝てるのね〜と変な所に関心をもっていた。ちなみにパジャマも体が冷えるのはよくないとヒイロによって無理矢理に着せられているのだ。
歪んだ顔のままのレディがため息をつき服を一瞥すると口を開く。
「カトル・ラバーバ・ウィナーから届いた制服の試作品だそうだ。どれでも好きなのを着てくれとの事だ」
先ほどの言葉に気になる点があったが、これ以上頭痛の種を増やしたくないレディはあえて聞かないでおいた。
デュオは色々な形のブラウスやらスカートの中に何故か混ざってセーラー服をつまみあげて渋い顔を作る。
「あいつら…絶対面白がってんな…」
この状況を完全に楽しんでいるカトルとトロワの事を思うとデュオの怒りがこみ上がる。横を見ればサリィと2人で服を選んでいる諸悪の根源のヒイロがいて、スカートを持ってはチラチラとこちらを見てきてその真剣な表情に更に腹が立ち、つい持っていたセーラー服を投げつけてしまった。またもヒイロの頭に当たったが、さっき投げた紙くずとは違い跳ね返る事はなく軽い音を立てて落ちる。ヒイロがそれを拾うとデュオと見比べ眉を寄せた。
「…こういうのが趣味だったのか」
意外そうに言うヒイロにデュオは顔を真っ赤にして否定し、こいつを何とかしてくれと言わんばかりにレディに視線を送れば、疲れた顔をしてこっちにふるなと手をヒラヒラさせている。デュオは自分に味方がいない事に冷や汗をかいた。このままでは着せ替え人形にさせられてしまうのは明白で、現に2人とも服を持ってこちらを見ている。その目は餌を見つけた肉食獣のようでデュオはすくみあがった。
「嫌だー!」
叫び逃げ出すデュオをヒイロが見逃すはずもなくすぐに捕まってしまう。結局ヒイロの無言の圧力に負けて沢山の服を着させられてしまったのだった。

「…リボンタイの方がかわいいけど、このジャケットに合わせるならやっぱり普通のネクタイの方がいいかしら?」
何度も着替えさせられぐったりとしているデュオの首もとにサリィがネクタイを当てヒイロに尋ねると、ヒイロは彼女が持っている物とは別のリボンタイを持ち、真剣に見比べていた。
「まだ終わんないの?そんなの何だっていいだろ…」
「お前は何もわかってない。タイ1つで全体の印象がかなり変わるんだぞ?」
まさか戦時中スパッツとタンクトップですごしていたあのヒイロに、服の事について怒られる日がくるとは思ってもみなかったデュオは呆然としてしまう。そんなデュオを尻目にヒイロはようやく決まった臙脂色で大きめのリボンタイを呆けているデュオの首につけた。
「かわいいわよデュオ!」
「かわいいって言われても全然嬉しくないし…」
出来上がった全体を見ての感想にデュオは不貞腐れて答える。ヒイロは何かをやり遂げた!という顔になってデュオを見つめていた。その表情が癪にさわり脛を思いっきり蹴ってみるが、ガンダムより丈夫なヒイロの体はびくともしなかった。
「終わったのならさっさと仕事に戻れ。それとデュオ、足は閉じろはしたないぞ」
しっしっとレディにお小言付きで追い払われた2人は五飛の待つ部屋へと向かうのだった。


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