荘にて2




爽やかな風が抜けて気持ちがいいテラスには不釣り合いなほどの不穏な空気が流れている。
誰もが無言でデュオを見つめていてピクリとも動かない。折角入れてくれた紅茶も冷めてしまっておいしくなくなってしまっただろう。

「あのさー折角お菓子もあるんだし…もっとこうさ…」
こういう空気に耐えられないデュオは、変な空気を作っている張本人なのに場を和ませようとする。
「そうは言っても、君が女の子だって知ってみんな驚いてるんだよ…」
「隠してたのは悪かったけど、女だからって何か変わるわけじゃないだろ?まあ態度が変わりそうなやつは1人いそうだけど…」
ちらりと五飛をみるとデュオから目をそらしてそっぽを向いている。
「あ、ヒイロもだな。毎日毎日同じことばっか言っててさぁいい加減聞きあきたね」
ふうと大袈裟にため息をつきぎろりとヒイロを睨むが、特に気にした様子はなくまた小言が始まった。
「大体お前はだらしなさすぎる。服は着ない、ベッドで寝ろと言ってもそのまま床で寝る、脱いだ服はその」
「わかった!もう何度も聞いた!」
「ちょっと2人とも喧嘩しないで下さい!」
今にも取っ組み合いになりそうな2人の間にカトルが入ってくる。
「でも、ひ…」
「デュオ!」
いつもより低い声で名前を呼ばれ睨まれる。その目は暗くすわっていた。
ひっと軽く悲鳴をあげつい隣にいるヒイロの腕にしがみついてしまう。それを見たカトルはふう、と一息するといつもの笑顔に戻った。
「確かに女の子だったことにはかなり驚きましたが、デュオがデュオであるということには変わりません。ただヒイロとしては、デュオにはもう少し女の子として自覚して欲しい、と言うことですよね?」
カトルは入口でのやりとりを思い出しながらヒイロに訪ねれば頷いて返事を返される。
どうしたものかとカトルが悩んでいると、ずっと沈黙していたトロワは顎に手を持っていき少し考えると口を開いた。
「…リリーナ・ドーリアンやドロシー・カタロニアの所に1ヶ月でも行けば立派なレディになってくるのでは?」
「ふざけんなよトロワっ!お嬢さんはともかく、ドロシーの所に行ったら何されるか…!それにお前ら、上品になった俺を見てみたいか?うーっ想像しただけで鳥肌がたつ!」
「少なくとも今の状態よりはマシだ」
ヒイロがきっぱり言うと、カトルもうんうんと頷きそれに賛同している。
「カトル、お前だけは俺の味方をしてくれると思ってたのに!」
「さっきのヒイロの話を聞いたらデュオに味方できませんよ。上品とか女の子らしくと言うより先に、だらしないのをどうにかした方がいいですよ。」
「うっ…」
言葉につまるデュオを見て、だらしのないことを自覚してるのかと4人は同じ事を思った。
「その2人が嫌ならばレディやノイン、サリィに頼むのはどうだ?どうせ同じ職場だ」
「レディはヤバイって!絶対殺されるっ!ノインの所にはゼクスがいそうだし…」
「ならサリィに頼めばいいではないか」
「でも…」
「黙れっ!次の出勤はその格好で来い!そうすればいくら鈍いお前でも女として自覚するだろ」
言い訳を探そうと必死になっているデュオに五飛は苛立ちを隠せないでいる。
「制服もレディに頼んですぐに用意させておく」
言い終わると冷めた紅茶を一気に飲み干し、この話は終わりだと言わんばかりにそっぽを向いた。
「わー!ヒイロごめん!もう家でだらしなくしないし、もう少し女らしくするから五飛を止めてくれ!!」
「今更遅い。五飛が一度決めたことを覆すと思うか?」
腕に泣きついてくるデュオにヒイロは冷たい視線を向けため息を吐いた。
「デュオ、何事もあきらめが肝心だぞ」
「うるせートロワ!俺は絶対に女物の制服なんて着ないからなっ」
「まあまあ、女性物と言ってもズボンがスカートになるだけですし…ああでもデュオにはタイトスカートが似合わなさそうですね。デュオに似合いそうなスカートに変更してもらえるように僕の方から頼んでおきますね!」
「俺の話を聞けー!!」
五飛を除く3人は怒鳴ったせいでぜいぜいと肩で息をするデュオを無視して、スカートの事からどんどん話が大きくなっていきデュオが割り込む隙もなく色々なことが勝手に決まってしまうのだった。