魔女っこデュオちゃん




ヒイロの正体が天使だとわかった翌日から、デュオはヒイロに対しイタズラを始めた。しかしことごとく躱され、鼻で笑われる日々が続いていたのだった…。

「まったく何をやっているんだお前は…」
「むーっ!うーへー」
本日も例も如く躱され、デュオは五飛に泣きついた。
最初は呆れていた五飛だったが、ヒイロに軽くあしらわれ相手にもされないデュオにだんだん哀れみを感じ、今では悩み相談までしている始末だ。
「幼稚な事はやめておけ。お前ではかなわない」
「ひ・ひでぇ…」
「事実だ。あいつには隙がない」
「むーっ!!」
「しかし今まで話した事も無いやつに何故ちょっかいを出す」
「それは…あっあいつ、俺の邪魔をすんだよ!あと髪の毛ひっぱられたり…」
デュオは嘘は言っていない。ただ、学校ではヒイロがデュオに何かをする事が無いので、その現場を見ていない五飛は首をひねった。
「みんなが見てない所でしてくんだよ。ホントっインシツなヤローだぜ…」
深く追求されないよう、デュオはすかさずフォローを入れる。そしてそれを信じた五飛は憤慨した。
「何て卑怯な奴だ!男だったら正々堂々としろ!!」
「それにお前も馬鹿なイタズラばかりしないで正面からきちんと勝負しろ!あいつに勝てるよう特訓だ!」
意外とフェミニストな所がある五飛が味方になって喜んだのつかの間、何故か自分までダメ出しされ、スポ根マンガの鬼コーチの様に燃え上がる五飛にデュオは焦った。

「ちょっと待って」
とそこに救世主があらわれた。
救世主の名前はヒルデ。男らしい一面と少女らしい一面を持つちょっとお節介な友達だ。
「特訓なんてしても無駄だと思うわ」
暗にヒイロには敵わないと言われたような気がして、ヒルデの言葉がデュオの胸を抉る。
「多分だけど…ヒイロくんはデュオの事が好きなんだと思う」
「「はぁっ!?」」
あまりにも突拍子の無いヒルデの発言に、ついデュオと五飛がハモってしまった。
「ほらぁ、男子って照れ隠しで好きな子をいじめたりするじゃない?ヒイロくんも素直になれなくてデュオのこといじめちゃうんじゃないかな」
デュオが思っていたような事を言いたかったわけでは無いようだが、想像の遥か向こうの発言にデュオも言葉を失う。五飛も同様に言葉を失い口を開けぽかんとしていた。
「それは絶対ないと思うんだけど…」
デュオは横目で後ろを見ると、ヒイロはこちらを気にしもしないで本を読んでいる。だいたいデュオとヒイロは、今一緒の教室で勉強しているが、本来敵同士。仲良くお友達ごっこなんてしていられないのだ。
「そうかしら?ちょっとむっつりっぽいし、わからないわよ〜」
そう言ってヒルデはニヤニヤしながらデュオの顔を覗き込んだ。


「ヒルデの奴テキトーなこと言いやがって…」
夜、大きな鎌を持って電柱の上に立つデュオは大きくため息をついた。
昼間ヒルデに言われたことが今だに尾を引き、なぜかデュオの心をざわつかせていた。
「ちくしょー!なんであんな奴の事で悩まなくちゃいけないんだ!」
デュオは持っている鎌をぶんぶん振り回し自分に渇を入れる。
「おっし忘れるためにも、今日で全部終わらせる勢いで頑張るか」
うーんとひと伸びしてデュオが飛び立とうとした時、いきなり後ろ突き落とされた。
「何すんだよ!危ないだろっ!!」
人間だったら死んでいた所だが(そもそも普通の人は電柱の上には乗らない)、デュオは魔女っ子でちょうど鎌にまたがり飛び立とうとしていた所なので一大事にはならなかったが、それでも後ろから突き飛ばすなんて非常識である。
「気が付かない方が悪い」
デュオが後ろを振り向くと、そこには呆れた顔をしたヒイロが浮いている。むっとしたデュオは鎌から電柱へ降り立つと、ヒイロの服を引っ張った。
「あのなー!いっつもいっつ俺のじゃ…」
ヒイロに対し文句を言ってやろうと服を掴んだのはいいが、距離が近いことに気が付き言葉が止まってしまった。
人間、特に興味がなかった人でも、自分に気があるといわれるとなぜか意識をしてしまうものである。デュオも例外なくドキドキしてしまった。
(こいつ…性格悪いけど、顔だけはいいもんな…って、何考えてんだ俺っ!!)
つい見とれてしまったデュオは、顔を真っ赤にして見とれてしまっていたことを否定するかのように首を振った。
「馬鹿ヒイロ!」
そして捨て台詞を吐いてヒイロを突き飛ばすと、鎌にまたがりどこかへ飛んで行ってしまった。1人残されたヒイロは、何が何だか分からずとぼうっとしたまま、デュオの消えた方を見つめていた。





20111007