さい天使の話




街の外れの小さな教会に優しい神父様とシスターと3人でデュオは住んでいる。
本当はもう一人いるのだがデュオ以外の人には見えない。

赤ちゃんの頃にデュオは教会の入り口に捨てられていてそれを見つけたシスターに拾われて育ち、物心がついたときにはもうデュオの側にいた。
もしかしたら産まれた時から一緒かもしれない。
神父様の手くらいの大きさで背中に小さな羽が生えている。
名前はヒイロと言って、良く絵などでみる微笑ましい天使とは違い無口で無愛想な天使だった。ヒイロはどこに行ってもついてきてデュオにとって兄弟のような友達のような存在だ。

やんちゃなデュオは今日も冒険と称して森の散策をしている。
まだ小さいデュオにとって教会の生活は退屈でこっそり抜け出しては森に来ていた。危ないから一人で行っては駄目よ、とシスターにきつく言われているのに…。


デュオ、シスターが心配する」
「大丈夫だって!」
「この間もそういってさわるなと言った漆にさわりかぶれた。その前は腐った木につまずいて、更にその前は上を見ながらあ」
「あー!もういいよ!今日は絶対大丈夫だから!」
ヒイロの言葉に耳をふさいで大声で言う。
「その言葉は聞きあきた。毎回同じ事を言って毎回何かしらおこす…全く学習能力のないやつだ」
「うるさいぞヒイロ!こんな時ばっか良くしゃべりやがって。俺は絶対に行くんだからな!」
こんな時のデュオに何を言っても無駄だと知っているヒイロは実力行使にでる。
「ぎゃっ!みつあみ引っ張るなよ!」
デュオ進行方向の逆にみつあみを引っ張って強引に教会に帰ろうとする。
「ヒイロだけ先に帰ればいいだろ」
デュオは自分の方へみつあみを引っ張りヒイロを止めようとするが、ヒイロはデュオよりも力が強くてそれも叶わない。
「良いのかそんなこと言って。今日のおやつはお前の好きなリンゴのパイだと言っていたぞ」
ピタッとデュオの抵抗が止まる。
「森に行った事がわかればおやつ抜きだろうな…最悪夕飯も抜きになるだろう」
これから起こり得るだろう事を聞いてデュオの顔はどんどん青くなっていく。
「やっぱり帰る!」
くるっと方向転換をして教会めがけて駆け出した。
「デュオ走るな!また転ぶぞ」
ヒイロの注意もむなしく土から盛り上がった根っこにつまずきこける。
どうしてこう学習能力が無いのだとため息をつき、デュオを立たせて土埃を叩いてやるとうつむいていたデュオはとぼとぼと歩き出した。
ヒイロが顔を覗いてみれば、デュオの目元は涙がたまって今にもこぼれそうで…。
「泣くな」
頭をぽんぽんと叩き慰めるがその行為がお気に召さなかったのか、ぺしっとヒイロを叩きまた駆け出した。森の出口はすぐなのでまあ良いかとデュオを追いかける。


走って教会に戻ってみればシスターが作ったおやつのかわりにお説教が待っていて、結局好物のリンゴのパイが食べられず教会の裏で拗ねているデュオの所にこっそり神父様がきて、自分の分のパイを半分シスターには内緒だよ、と分けてくれた。

シスターやヒイロが厳しくしても神父様がデュオを甘やかす。
バランスが良いのか悪いのかわからないがにこにことパイを頬張っている2人を見てまあ良いかとヒイロは一息ついた。
シスターがパイを食べてる2人を見つけるまで…。