寝起きでぼんやりした視界に入ってくるのは、かつて共に戦った人物が、熱くなったフライパンに卵を落としている姿だった。
たとえば、こんな日常
「おはようヒイロ。よく眠れたか?」
デュオの言葉にヒイロは頷いて返す。
「もう朝食できるから、座って待ってろよ」
その言葉に促され席に着くと、フライパンに蓋をしたデュオが、テーブルの上に置いてあるトースターにパンをセットした。
よくわからない鼻歌を歌いながら、てきぱきと朝食を用意していく姿に、手持ち無沙汰になったヒイロはとりあえずフォークを握ってみる。そしてとりあえずその先端を眺めていた。
そこにもう1人のデュオが入ってきた。なぜ同じ名前にしたのか、目の前で朝食を用意している人物よりも、よっぽど見覚えのある姿の彼の息子は、ヒイロに興味を示さずやはり父親に促され席に着く。するとすぐに2人の前に目玉焼きが運ばれてきた。
デュオは飛び出たトーストをさっさと取ると、ベーコンと目玉焼きを乗せ口に頬張る。ヒイロはそれを横目で見ながら目玉焼きをフォークで切りはじめた。
ターンオーバーでじっくりと焼かれた卵は、フォークを入れるとぼろぼろと崩れていく。それを嫌そうに見つめる視線を感じたが、ヒイロはやめなかった。
「ヒイロ、もしかして嫌いだった?」
「いや・・・」
「俺、生っぽいの苦手でさ〜。ヒイロも苦手なのがあればいえよ」
目玉焼きの焼き方にこだわりがあるわけではない。ただ、ひと口大に分けてから食べる癖があるだけだ。
一通り切り終わり、ようやく口に運ぶと何の味付けもされていなかった。
ヒイロの好みを知らないデュオなりの配慮であろう。
「おい・・・」
ヒイロが一言言うだけで、デュオはすぐヒイロの目の前に塩と醤油が置いた。
2人の間に年齢差がができてしまっても、言葉数の少ないヒイロが何か言えば、デュオはそれをくみ取ってくれる。結局ヒイロが成長を止めていようが、デュオが大人になっていようが、2人の関係は何も変わっていなかったのだ。
そのことにヒイロが安堵していると、隣で食事をしていたデュオがいきなり席を立ち、部屋へと戻って行ってしまった。
「ったく、片づけもしないで・・・」
食べ終わったデュオは空いた皿を見ながらぶつぶつと文句を言っている。
「あれが反抗期ってやつかね〜?」
2人分の皿を片づけながら首を捻るデュオに、ヒイロは先ほど安堵したのもつかの間、デュオ親子と自分との間にある大きな隔たりに寂しさを覚えた。
20110122