とえば、こんな日常




焦げたにおいに、雑に扱われた食器の伴奏と旋律の鼻歌。
いつもと変わらない朝。しかし少し だけ違う朝。


たとえば、こんな日常


デュオが顔を洗ってリビングへ行くと、すでに客人が食卓に着いている。ついこの間まで眠っ ていた人物、ヒイロ・ユイだ。
なぜこの家に来たのか詳しくは知らないが、目覚めたばかりの人物は、フォークを握ったままぼうっとしている。
「もうできるから、はやく席に着け」
全く同じ名前の父親が、こちらを振り向かずに指示を出してくる。デュオはそれに逆らわず、 イスに座ると、すぐ自分の前に皿が運ばれきた。
ターンオーバーでじっくりと焼かれた目玉焼き、そのわきに添えられた焦げたベーコン、不揃いな千切りキャベツ。デュオは、トースターから勢い良く出てきたパンを取り、目玉焼きとベーコンを乗せ口に運ぶ。
(冷凍されて脳細胞壊れちまったんじゃねーの)
いくら長い間眠っていたからといって、こんな呆けている男が自分より本当にすごいのか、父親から耳にたこができるほど聞かされた、ヒイロ・ユイ像とはかけ離れた人物をデュオは疑問 に思った。
冷めた目で隣に座るヒイロを見やると、目玉焼きをフォークで切り分けている。じっくり焼か れぼそぼそになった黄身が散らばり飛び散っているのを見て、デュオは顔をしかめた。
「ヒイロ、もしかして嫌いだった?」
「いや…」
「俺、生っぽいの苦手でさ〜。ヒイロも苦手なのがあれば言えよ」
デュオと同じようにトーストに、目玉焼きとベーコンを乗せた物を頬張りながらにこにこしている父親。
「おい」とヒイロが言えば、すぐに彼の目の前に塩や醤油を置く父親。
なんだか割り込めない(割り込もうとも思わないが)2人の雰囲気に、デュオの顔は余計に歪んでいく。
この空気に耐えられなくなったデュオは、残っていたキャベツを口の中に押し込み、さっさと部屋へ戻った。

デュオはベッドに勢いよく倒れこむと、枕に顔を埋める。
父親との仲が良いわけではないのに、なぜか1人取り残され置いてけぼりにされた様な寂しさを感じ、デュオはそんな感傷的な自分を鼻で笑った。




20110122