ベーコンが焼ける香ばしいにおいででデュオは目が覚めた。
デュオは一度伸びをしてからベッドを出て、ダイニングへ向かった。
弾ける油の音にベーコンの焦げたにおい。その全てがデュオに食欲を刺激した。
「おはよー!お腹すいちまっ・・・た・・・」
決してお腹がすきすぎて言葉が止まったのではない。キッチンであり得ないものをみてしまったからなのだ。
ベーコンを焼いてるヒイロ。それは普段の風景。しかし今日はいつもと違う部分があった。
まずヒイロが3人いること。そして1人1人の身長が50センチ位なのだ。
デュオも人数は違うが身に覚えがある。どうしてそうなったのか不明なのだが、デュオもちょっと前に5人に分裂してしまった。
イスを押さえているヒイロ。ベーコンを炒めているヒイロ。そして、そのヒイロを肩車しているヒイロ。
いつもと同じ仏頂面なのに、ちょこまかと作業する姿はどこかアンバラスでかわいらしい。
「もーっおまえらかわいいな!」
デュオはイスを押さえていた1人を抱き上げると、ぎゅうと抱きしめ頬ずりをした。
抱きしめられているヒイロは満更でもなさそうだ。しかしそれを横目で見ている他の2人は、あくまで無表情なのだが不機嫌になっていった。
「お前ずっとこのまんまでいいよ!」
というデュオの言葉に、3人とも一斉に眉をしかめた。
「それは困る・・・」
今の手の大きさには長すぎる菜箸を持ったヒイロがぽつりと言うと、他の2人も同感だと頷いた。
「えー何で!?せっかくかわいいのに」
ヒイロが困るというのは、仕事や家事等々に支障を来すからであって、決して不埒な事ができないからではない。まあ、1人だけかわいがられている状況に、他の2人は不満と嫉妬もあるのだが・・・。とにかく不便で仕方がないのだ。
「デュオ、この間の袋を持ってきてくれ」
皿にベーコンを盛りつけたヒイロがデュオの方を向いた。
「いいだろこのままで!」
この間の袋、それは5人に分裂したデュオを元に戻した袋である。そこにヒイロ達を詰め込んで元に戻ろうと考えたのだ。しかしデュオは、いつものヒイロだとこんな風にだっこもできないので、このかわいい状態のままでいてほしかった。
「この体では不便すぎる」
「まあ確かに・・・でも、直ぐに元に戻らなくてもいいだろ」
ヒイロもデュオも両者一歩も引く気はなく、キッチンで2人は一触即発の状態になった。
しかしその状態は長く続かず、直ぐに終わりを告げた。
その原因は肩車をしていたヒイロである。料理をしているときも、デュオと話をしているときも、ずっと上にいるヒイロを支え続けていたのだが、小さくなって体力や筋力が落ちたのか、とうとう支えることに限界がきたらしい。よろめいているヒイロに、デュオがあわてて支えようとするが一歩遅く、2人ともデュオの方に倒れてしまった。
いくら小さいとはいえ、デュオは3人支えきれずに倒れてしまう。
床にぶつかる!と思った瞬間、目の前が強い光に覆われた。あまりの眩しさに目が開けられない。そして、光が引いていくのと同時に、デュオの体は床に叩きつけられる。その時腹のあたりに重い衝撃を感じた。
「いって〜」
腰を強打したデュオは、ヒイロ達が全員乗っているのか、重くて起きあがる事ができなかった。
「早く退いてくれ!」
ヒイロ達の返事はなく、デュオは強い光にやられた目がようやく治り、加重が集中している腹の辺りを見た。
そこにはすでに3人の姿はなく、いつもと同じヒイロが気を失っていた。
「何だよ・・・もう戻ったのか・・・」
デュオはがっかりした様子を隠そうとしなかった。
せっかく元に戻ったのにそんな態度をとられたヒイロは、気がついたにもかかわらず、気を失った不利をし続けデュオを困らせたのだった。