或る朝の事でした。普段は寢坊しないデュオがいつまで經つても起きて來ませんでした。
冬が間近に迫つてゐる朝は、布團から出るのも戸惑ふやうな寒さですから、きつと布團の中で丸くなつてゐるのだとヒイロは思ひました。
然し彼の部屋へ行つて見ると、脱け殼のやうな布團がぽつりと殘されてゐるだけで、中身であるデュオがゐませんでした。不思議に思ひ部屋を見囘してみますと、少し窓が開いてゐる事に氣がつきました。
ヒイロがデュオを追ひ掛けるため窓を開けますと、霜こそ降りてゐませんが、冬のやうな冷たひ空氣が吹き附けて、寢卷きだけではとてもゐられません。ヒイロは近くに置ゐてあつた上着をはをり、更にもう一つ手に持つてから外へ出て行きました。
朝露が附いた草が素足を濡らし餘計に軆を冷やします。其れを不快に思ひながらヒイロは庭の隅つこにゐるデュオの元へと行きました。
デュオの背後へ到着すると、後ろから上着を掛けてやり、
「何をしてゐる」
とヒイロが問ふと、
「山を見てゐるんだ」
とデュオは答ました。
ヒイロはデュオが見てゐる方へ視線を向けますと、山の赤や黄色が高ひ空に良く映えてゐるのが見えました。
「何時もは忙しくて見逃してゐたけれど、改めて見ると凄く綺麗だなあ」
普段見慣れた風景が、餘りに綺麗なのでデュオは感動してゐるやうでした。
ヒイロは改めて庭の周圍を眺めてみますと、先程不快に思つた朝露も、紅葉した山も、秋晴れの空も、總てが美しく目に飛び込み、デュオ同樣ヒイロも自然の美しさに目を奪はれてしまゐました。
十分位二人はその場に立つてゐたでせうか、今日も仕事があつたことを思ひ出し、二人は急いで支度をするため部屋へと歸つて行きました。
20101026