空の星




終戦後、ガンダムのパイロット達は一時政府の元へ保護された。身元がはっきりしているカトル、五飛そしてサーカスで働いているトロワは直ぐに解放され、ヒイロも制限付きではあるが解放された。
残るデュオは全世界に顔を晒された事もあり、今だ保護された状態でいる。
保護といえば聞こえが良いが、ほとんど監禁されている様なものだった。
小さな部屋には、逃走防止のためたのか採光用の小さな窓しかなく、閉められた扉は、日に3度の食事が運ばれて来るとき以外は開かない。バルジで捕まった時よりマシだと思わせるのは、明るい室内、きれいな寝具とトイレ、それに格子が無いこと位だ。

夕食が終わり、する事が無いデュオはベッドの上で寝転んで白い天井を眺めている。
ここに来てから誰かと喋る事もなく、何か暇潰し出来る物もなく、食べては寝て、体が鈍らないようにたまに運動をして…というのを繰り返していた。
白い壁に囲まれた単調な日々…。
変化のない生活にデュオは狂ってしまいそになる。むしろデュオが狂うのを待っているのかも知れない。
窓の外から見える空は暗くなり始め、うっすらと星が出ている。その星をちらりと見てから、デュオは故郷の宇宙を想いながら目を閉じた。


不意に部屋の明かりが消えた。
デュオは目を開けると扉の外を伺うが物音は聞こえない。疑問に思ったが、何かあったら誰かしらここへ来るだろうと、再び目を閉じた。

それからして直ぐに鍵の開く音がした。次いで開いた扉へ視線をやると、そこには見慣れた制服の監視官ではなく、なぜかヒイロが立っていた。
デュオは驚きのあまり声が出ないでいる。その様子を気にするわけでなく、ヒイロは喋るなと言わんばかりに口許に人差し指を持っていく。
「な…何してんだよお前!」
小声でデュオが聞くと、
「ここを出るぞ」
とヒイロは一言だけ言い、手を差し出してきた。

その短い言葉にデュオは戸惑う。自分の為にヒイロまで追われるはめになるのでは?と…。だからデュオはヒイロの手を取る事ができなかった。
動こうとしないデュオにしびれを切らし、ヒイロはデュオの腕を引くと強引にベッドから引きずり降ろしそのまま歩かせる。デュオは無理やり引っ張られよろけた。
「ちょっと待てって!」
ヒイロの手を振り払い、デュオは一旦距離を置いた。
「お前なに考えてるんだよ…こんなことしたら、お前まで…」
「あいつらに見つからなければいい。俺たちだったら簡単な事だ」
「そりゃあそうかも知れないけどさ…でも…」
煮え切らない態度のデュオに、ヒイロはもう話すことは無いとデュオの手を取り廊下を走り出した。

「ほんとお前って自分勝手だよな〜」
さっきまでうじうじしていたのが嘘の様なデュオの明るい声。困った様な表情の中に、嬉しさがにじみ出ている。バルジと同じくほぼ無計画なヒイロの行動に苦笑しながら、デュオはヒイロの手を離さないようにぎゅっと握りかえした。
そして2人は建物から脱出すると、星空の中へ消えて行った。


20100707