食事の話
デュオの家にヒイロが住み着いて数日が経つ。
相変わらず文句を言ってはいるが追い出すことは諦めたようだ。
ヒイロは学校に行ったりどこからか見つけてくるバイトをしたりしていて、デュオはヒイロが来る前と同じくジャンク屋を営んでいる。
家事の分担は話し合った結果その時できる方がやる、という事になったのだが食事の用意はほとんどヒイロがやっていた。
何故ならデュオは食べられれば何でも良いと言う考えで、食卓にあがるもののほとんどが煮ただけ、焼いただけ、味付けはあっても塩コショウと言う感じだったからだ。
ヒイロも食に対して興味は余り無かったのだが、流石にデュオの作る料理(料理とよんで良いのか微妙だが)に嫌気がさし、忙しい時でも自分で作るようになった。
元々凝り性なヒイロは本などで調べ色々な料理に挑戦したりしている。
たまに失敗して酷い味になったりするのだがデュオは文句を言わずにに食べていた。最もヒイロが渾身の出来!と思って出したものでも何も言わないのだが…。
旨いとも不味いとも言わないデュオが気になり、とある晩デュオのスープだけ味付けをめちゃくちゃにした。
しかしデュオは涼しい顔をしてスープを飲んでいる。それを見てデュオに出す前に味見をした事を思いだし、ヒイロは眉を寄せた。
「しかめっ面なんかしちゃってどうかしたのか?」
「いや…味はどうかと思って」
(ヒイロも人並みにそういう事を気にすんだな…)
とデュオは驚きつつ、うまいとかほんとお前って何でもできるんだな〜なんて軽口を叩きながらながらずずっとスープをすすった。
それを聞いたヒイロの顔が更に険しくなりデュオは慌てた。
「どっどうしたんだよヒイロ…何か変だぜ…」
「変なのはお前の方だ」
「俺のどこが変なんだよ?」
「お前は味がわからないのか?」
言ってる意味がわからないといった顔をしてスープとヒイロの顔を交互に見た。
「何か変なものが入ってるのかよ?」
「食べられない物は入って無い…がそのスープは凄く不味い」
「へ〜…そうなんだ…ってお前そんなもんを俺に食わしてたのか!」
「だがお前は旨いと言った」
「うっ…それはそうだけど…」
「今まで不味いと思ったものはないのか?」
デュオは頭をがりがり掻きながら唸り声をあげている。
「食べれるもので不味いと思ったものは無いかな…流石に泥水とかはちょっと…」
ヒイロは頭を抱えた。泥水は食べ物でも飲み物出もない。
しかも「泥水とか」と言っている時点で泥と同列の物があるのだろう。
もしかしたら、アスファルトやコンクリートも食べたことがあるのかもしれない・・・。
「そういえば昔、女の子から貰った団子は泥の味がして飲み込むのに苦労したぜ」
その団子の味を思い出したのか顔をくしゃっとゆがめ、あれは酷い味だっただのと言っている。
本当に開いた口が塞がらないといった感じでヒイロは珍しく間抜けな顔をしてらしくデュオに笑われて顔を引き締めた。
「一体お前はどんな食生活してたんだ…?」
「別に…落ちてるのを拾ったり、食料庫を漁ったり…」
落ちている物…やはり食べ物では無いものも食べていたのだろうか…。あまり深く考えたくないが、さっきの泥団子の話からすると絶対に普通の人が食べないようなものまで食べたことがあるのだろう。
味覚は5歳までに発達するらしいから、デュオの味覚はこのままなのかも知れない。いや大人になると、今までまずいと感じていたものがうまいと感じるようになることもあるぐらいだから、もしかしたらおいしいものを食べ続けたら味覚がまともになるかもしれない。おいしいものをデュオに食べさせる、それがこれからの俺の任務だ・・・!
「おーいヒイロ、ひーろ!ひーろさーん?」
妙な使命感を感じ燃えているヒイロに呼びかけても目の前にひらひらと手をかざしても反応が無い。
大丈夫かよ・・・なんて思いつつ残っていたスープをすすり始めるといきなり立ち上がったヒイロはデュオの手を握り締め、
「俺に任せておけ」
と真顔で言い放つ。
何が何だか分からないデュオはとりあえずおうとだけ返事をして、いきなりの行動でこぼれてしまったスープをどうにかしたいと考えていた。