早朝の…
新しい葉がでた木々がもっさりと森を覆う。朝露に濡れた葉が太陽を浴びてきらきら反射し、緑の光が森に溢れていた。
朝の湿気を含んだ空気はひんやりと冷たく、薄着でいたデュオは身震いした。それを見ていた神父様が手招きをしデュオを呼ぶと、外套を少し開け中に招き入れた。
「あったかい」
デュオは外套にくるまると、顔をあげ神父様に向かって、にっと笑う。そんなデュオに対抗してか、神父様もにっと笑って見せた。
2人の様子をデュオのそばで見ていたヒイロはため息をついた。
昨日の夕食の時、薬草を摘みに行くと言った神父様に、ついて行きたいと駄々をこねたデュオ。
それを神父様が、
「自分で起きられるならいいよ」
と許可したのだが、早起きに自信がないデュオはヒイロに起こしてと頼んだ。
そして朝、やっぱり1人で起きられないデュオをヒイロは起こす羽目になる。ちょっと突っついた位では起きないデュオを、あの小さな体からは想像もできない力で、ヒイロはデュオのほっぺをつねり、あまりの痛さに飛び起きたデュオに仕度を急がせた。
その時ヒイロは、
「上着を持っていけ」
ときちんと忠告したのだが、デュオは歩くと暑くなるからいらないと無視したのだ。
にこにこした2人を尻目に、ヒイロはそんな朝のやり取りを思い出して、もう一度ため息をついた。
目的地に着くと神父様は薬草を摘みはじめ、デュオはその周囲を探索しはじめる。
「薬草摘み、手伝わなくていいのか?」
がさがさと腐った木や葉っぱをひっくり返しているデュオにヒイロが問うと、
「いいのいいの」
と鼻歌混じりで返された。せっかくシスターがデュオ用にとかごを作ってくれたのに、ぽつんと地面に放置されている。
このまま空で持って帰るのを躊躇ったヒイロは、神父様に気がつかれない様にこっそりと、薬草を摘みかごに入れていった。
小さなかごが薬草で一杯になったころ、ヒイロ、と小声でデュオに呼ばれる。何事かとよってみれば、朝露と泥で汚れた手を差し出された。
小さな手では隠しきれなかった茶色の尻尾がはみ出して見える。薬草も摘まず、ずっとこれを探していたのかと思うと、ヒイロは頭が痛くなってくる。
ヒイロが少しは神父様の手伝いをしたらどうだ、と小言を言おうとすると、今度は神父様がデュオを呼んだ。
にこにこした神父様も、デュオの前に両手を差し出すと、ゆっくりと手を開く。すると中から黒いトカゲがあらわれた。
デュオが捕まえたがさがさの茶色いトカゲとは違い、艶々した黒いトカゲは、光を浴びると虹色にぴかぴかと光る。デュオがそれを覗きこんでいると、神父様もデュオの手の中のものに気がつき、2人は顔を合わせるとにっと笑いあった。
そんな2人の様子にヒイロは、デュオに言おうとした小言を飲み込み、呆れてもうため息もでなかった。
朝露でびっしょりになりながら2人(とヒイロ)は帰路につく。手の中にはもちろん二匹のトカゲ。
ちょっと音程の外れた歌を歌いながら、2人仲良く並んで帰り道を歩く姿は、親子ではなく、まるで悪戯を企んでいる友達同士の様で、ヒイロとしては内心複雑だった。
朝食を作って待っていたシスターが、泥だらけなうえ、トカゲを捕まえて自慢げに見せてくる2人に、雷を落としたのは言うまでもない。
20100524