イロくんの恋人 クリスマス




あと数日でクリスマス。今までは浮かれてなどいられなかったけど、平和になった今はその日がくることを普通の子供の様に楽しみにしていたのだ。ちょっと前までは…。


この前街へ買い物に行った時、クリスマスの雰囲気をヒイロのポケットから楽しんでいたデュオは見てしまったのだ。チラシ配りをしているサンタクロースを凝視しているのを…。そして今までのヒイロの事を考えてみれば、クリスマスにサンタの服を着ることを強要されるのは目に見えている。
つい最近ハロウィンだからといって色々な衣装を着せられ、年賀状を作るからとまた色々な衣装を着せられたばっかりなのだ。もうトレーディングカードが作れるんじゃないか、というくらい写真を撮られ、デュオはいい加減うんざりしてきていた。
そんなイベントが無くても、何故かリリーナから送られてきた高そうなドールハウスを使って撮影したり、最近では洋服だけではあきたらずヒイロお手製の小物を持たされる始末。ヒイロの頼みだからといってもさすがにデュオも不満を漏らしたのだが、その時落ち込んだヒイロの顔に罪悪感を感じそれ以来強く言えないでいた。

ドールハウスを横目で見てみればすでに小さなツリーが飾れている。ツリーに罪はないが、みるたびに憂鬱な気分になってしまう。せめてクリスマスが来る前に体が元に戻れば…とキラキラ光るてっぺんの星を恨めしそうにデュオは見つめていた。


しかしデュオの願いも虚しく、体が小さいままクリスマスイブはやってきた。ふてくされながらツリーを見つめていたデュオがヒイロの目には、この日を楽しみに待っていた様に見えていたのか朝から料理の準備に余念がない。しかも表情はいつもと同じなのに、浮かれた空気が漂っている。
デュオはキッチンから流れてくる甘いにおいにやり場のない怒りを感じ、ヒイロの手作りテディベアを顔を埋めてぎゅっと抱きしめた。その様子をこっそり見ていたヒイロは頬を緩ませている事に気がつかないまま…。

いつの間にか寝ていたのかデュオが目を覚ますと布団(ヒイロお手製の羽毛布団)がかけてあり、キッチンにこもりっきりだったヒイロはデュオの隣で本を読んでいる。体を起こしたデュオが見上げるとそれに気がついたヒイロが優しく微笑む。
ヒイロの事を全く知らない人が見たら見惚れてしまうだろうその表情。だかしかし一緒に暮らし、他の人よりもちょっとばかしヒイロの事を知っているデュオにとっては、悪魔の微笑みにしかみえなかったのだった…。
ぞぞぞっと全身に鳥肌が痛いほどたったデュオは目をそらし布団に潜る。
(これは悪い夢だ!目が覚めたらきっと…!)
現実逃避をするように頭まですっぽりと被るが、すぐにヒイロに足の方をめくられてしまい、正に頭隠して尻隠さずになってしまった。
「せっかく作った料理が冷める。早く起きろ」
さっきの表情とはうって変わって不機嫌そうなヒイロの声に渋々布団から顔を出せば、目の前のドールハウスに嫌でも目がいってしまう。さっき見た時には無かった物が沢山飾れていて、食事が終わったあとの事を想像するだけで気分が重たくなった。


夕食後、デュオが考えていた様な衣装を着て撮影、という事は無く、ただ食事中に写真を撮られる位で(本当はそれも嫌なのだが)、普段通りの夜だった。
しかし風呂から上がり用意されていたのは、いつもの動物の着ぐるみでは無く、薄いピンク色をしたかわいらしいパジャマでおまけにナイトキャップまでおいてある。あまりの少女趣味なパジャマに目を疑うが、他に着るものもなく、渋々手にとってみるとワンピースっぽくなっていてちらほらレースがついていたりする。デュオはこんなものを男である自分に着せようとするヒイロを訝しげな目で見上げた。すると期待に満ちた目でデュオを見つめているヒイロと目があった。


結局ヒイロに弱いデュオは乙女チックパジャマを着て布団に入っている。
ドールハウスのベッドに靴下が下げてあった様に、ここにも靴下が置いてあった。まあ写真撮影が無いだけましか…何て思いつつ眠ったデュオは知らなかった。ヒイロが靴下にプレゼントを入れ寝姿を激写していることを…。



20091212