日本のとある県のちょっぴり田舎な街の学校に、ある日長いおさげの女の子が転校して来ました。
女の子の名前はデュオ。
明るく社交的な性格ですぐにクラスの皆と仲良くなりました。
でもデュオちゃんにはみんなには言えない秘密があるのです…
「あっー!何で起こしてくんねーんだよっ!」
朝からバタバタと家の中を行ったり来たり、髪の毛はボサボサ、制服は脱ぎっぱなしだったせいであちこちしわだらけ。
「何度も起こしたのに起きてこなかったお前が悪い」
行儀悪く食パンをかじりながら洗面所で支度をしているデュオの耳元で説教をする(毒)キノコの妖精。
手のひらサイズの妖精はぶつぶつと文句を垂れているけれど、遅刻寸前のデュオの耳には届かない。それどころかみつあみを編むのに邪魔だからと手のひらで追い払われ、ふんっと鼻を鳴らしどこかへ消えてしまう。
「俺だって学校行ったり、試験の事で大変なんだからな!」
もういない妖精に向かってデュオは叫ぶとわきに置いてある鞄を取り玄関に走る。まだ転校して2週間、それなのに遅刻するわけにはいかないから…。
急いで教室に入るとまだチャイムは鳴っていなく安心したのか机に崩れ落ちる。全力疾走してきたおかげで息は上がり肺が痛くてしょうがない。机に突っ伏して息を整えていると軟弱ものが!と頭を叩かれる。少しだけ顔を上げると腕を組んでこちらを見ている五飛と目が合った。
五飛はデュオの隣の席で、悪いやつではないけど一人で突っ走ったり、他人の言うことを聞かなかったりとなかなかどうして自己中心的なクラスメイトだ。
「朝からだらっとするな!」
五飛の一喝にしぶしぶ体を起こし、ため息をつく。
「俺だってさー色々大変なんだよ…昨日の夜だって…」
そこまで言うとデュオは、はっとして口を押さえる。
「夜がなんだ?」
「いやーちょっと夜更かししちゃってさ…」
あはは〜と笑って誤魔化すけど、内心冷や汗が止まらないでいる。
夜の事はみんなに秘密にしなくてはいけない。それはデュオの通っていた学校の試験内容だから。
デュオは一人前の魔女になるために魔界の学校へ通っていたのだが、卒業試験のため人間界へ降りてきたのだ。
試験内容は、人間にばれないようにいたずらを100個すること!で、口の軽いデュオは危うく自分から言ってしまいそうになってしまった。
(危ねー…自分からばらしてどうするんだ!)
もっと気をつけないと!と心に誓うと五飛と向かい合い世間話をしはじめるが、すぐに次の数学の宿題をやっていないことに気が付き五飛に泣きついた。その様子を後ろからじっと見ている視線に気がつかないまま…。
夜、デュオは自分の背丈よりも大きな鎌を持ち電柱の上に立って街を眺める。
昨日は自分に吠えた犬に眉毛を書いて、一昨日は畑につるされていたCDを全部はずして、その前は…とここにきてからやったいたずらを思い返し、今日は何をしようかと思案をめぐらす。
「よし!今日は駅の放置自転車なぎ倒しに決めた!」
行くぞ、と気合を入れ鎌にまたがろうとすると、水を差すように声をかけられた。その声はいつもうるさいキノコ妖精ではないが、どこかで聞いた事があるものだ。誰だっけなーと記憶の中から探すも出てこない。デュオは首をかしげながら声のする方へ振り向いた。
「…ヒイロ!お前なんでこんな夜中にそんな場所にいるんだよ!」
そこにいたのはクラスメイトのヒイロ・ユイ。無口、無表情で何考えているのかわからないやつ。クラスの女子はそこがミステリアスでいいの、なんて言ってたけど、デュオには全く理解できない。
「ここ最近起きている変な事件の犯人はやっぱりお前か…」
ヒイロの言葉にびっくりし、いまさらながら鎌を背中の後ろに隠すと、なんとか表情に出ないように笑顔を作る。
「何もなかったらほおっておこうと思ったが、こんなにいたずらが多いとほおってはおけない」
言い終わるとヒイロは立っていた屋根を蹴りデュオの方へと飛んでくる。何が何だかわからないで軽くパニックになっているデュオは、鎌にまたがりヒイロから逃げようとするが、みつあみをつかまれ思いっきり引っ張られた。
「いてーな!何すんだよ」
付け根の部分をさすりながらヒイロの方を振り向くと、何にもない場所にヒイロが立っている。その周りは淡く光っていてよく見るとヒイロの背中には真っ白い羽根が生えていた。
「おっ、お前まさか天使なのか?」
ショックを受けているデュオに、何をいまさらといった表情で視線を投げ返すヒイロ。
「俺がいる限りこの街でいたずらはさせない。まあお前みたいなへなちょこじゃ何もできないと思うがな…」
きっぱりと言い放つと徐々に光が強くなってくる。何とかみつあみを奪い返したデュオは強い光に思わず手で顔を覆った。
光はすぐに消えさりデュオはゆっくり目をあけるともうそこにヒイロはいなかった。
「…ちくしょー!あいつ、俺を馬鹿にしやがって!明日ぜぇーーーったいあいつにいたずらしてやる…!」
癇癪を起したかのように鎌を振り回しながら怒鳴ると、近所の犬たちがその声に反応して一斉に吠え始める。これはまずいと何もしないで早々に帰宅したデュオを待っていたのは青筋を立てたキノコ妖精で、何もしないで帰ってきたデュオを延々と叱りつける。何もできなかったのも、怒られるのも全部あいつせいだ!と枕を叩いて気を紛らわせ、楽なもんだと軽く考えていたのに予想もしていなかった障害があらわれ、いつ終わるか分からない試験にデュオはがっくりと肩を落とした。
2009.10.28