ボツネタ


もしかしたら完成するかもしれない話たち。


螺旋階段の上の国

汚れの無い白い壁が続く。そこには窓もなく照明も無いのに何故か一定の明るさがある。上を覗いても下を覗いても階段とそれを囲む壁しかなく、入口や出口らしき物も見当たらない。
ヒイロは何故自分が階段を登り続けているのか分からなかった。気が付いたら階段を登っていたから。腹も減らず疲れもせず、ただただ階段を登り続けている。何を考えてもこの場所の様に、同じことを延々と繰り返す。
一定のテンポを刻む足音以外他の音は聞こえない。ヒイロが立ち止まれば、耳が痛くなるような無音の空間。目的も使命も義務も何も無いのにヒイロの足は止まらない。その先に何が待っているのか、それとも永遠に階段が続くのか全く分からないが上へ上へと向かって行く。



エキュメノポリスに続く道

最初に会ったのは海だった。リリーナを殺そうとした時。次は病院その次は…――

デュオと出会ったことを振り返る。お互いOZと戦うためにコロニーから地球へやってきた。印象は工作員のくせに目立つ格好、そしてよくしゃべる口。自分の任務遂行に邪魔になる者。デュオは同じガンダムのパイロットとして親近感がわいたのか、やけになれなれしく接してきた。あの時はそれが鬱陶しくてしょうがなく、目立つなと言っても聞かないデュオに苛々していた。



さわらぬ神に…

ヒイロとデュオが同棲しているという事は、プリペンダーで働いている人で知らない人はいないのではないか?というくらい広く知れ渡っているわけで、同じ部署机は隣どうしで多少イチャつかれても同僚達は二人を生温かい目で見守っていた。
それはいつもの話で今は違う。
普段だったら五飛がキレるぐらい甘い空気(ヒイロの表情は変わらないけど)が漂っているこの部署は、今まるで南極のような冷たい空気が充満して、少しでもへまをしたら射殺されそうな勢いだった。
この部屋の雰囲気を悪くしているのはもちろんもちろんヒイロとデュオで、お互い苛々しているのか一言も喋らず黙々と作業をしている。ときたま何かが壊れる音が聞こえるが、同僚たちは怖くて振り返れないでいた。
それでも今日はましな方なのだ。この前の時はここが廃墟になるほど二人が大暴れしてレディの一喝でようやく暴走が止まった。良く怪我人がでなったもんだとみんな感動したくらいだ。



忘却の砦

何百年も前にあった戦争により無くなったこの街は、傷痕ごと植物に侵食され、崩れながらもまだ残っている屋敷だけが、かつてここに街があったことを主張していた。

戦争が終わってからずっと放置されてきた森と、森になったこの街をようやく調査することになり、その調査隊の1人としてヒイロはこの場所にやって来た。

ヒイロは古い地図を片手に唯一建っている屋敷を眺め、壁に沿って歩いていく。マックスウェル家、この辺りいったいを治めていたらしいが、壊れた壁から突き出た大木、木と一体化した建物の一部、かろうじて残っている部屋は荒れ果てていて今は見る影もない。
屋敷の周辺を一通り見て回ると、ヒイロは小休止を取るため腰を下ろした。
大広間だったのだろうか、広い空間に暖炉がありその回りには綺麗に彫刻がほどこされている。風化をまのがれ残るそれは、土埃と灰が付いて汚れているものの、この部屋で唯一原型を留めていた。
今ではほとんど使われることのない暖炉が珍しく、ヒイロは触ってみたり中を覗いて見ると、内部は煤で黒くなっていて当時きちんと使われていたことがわかる。側面を触るとうっすらと手の後が残り、煤が少し落ちた所に切れ目が見えた。自然にできた亀裂とは明らかに違う直線。その部分の煤を手で払ってやると小さな扉の様になっていた。
そこを力いっぱい押してみると通路が現れる。大人が四つん這いでやっと通れる位の大きさで、きっと何かあった時のための隠し通路だろうとヒイロは推測した。
懐中電灯で照らしてみるとあの戦争の時に使われたのだろうか、何かが擦れて煤が落ちている所がある。どこに繋がっているのか興味を引かれ奥に進んで行くと少しだけ広い空間に出た。
じめじめしたこの部屋は窓は無く、天井も大人は屈まないといられないほど低い。しかし広さは十分にあり、一時的に避難するために使ったのか木箱が何個か置いてある。懐中電灯を照らしつつ慎重に探っていると近くで物音がした。