弁当と芝生と昼休み
味覚のおかしいデュオにおいしい料理を食べさせるべくヒイロは日々研究をしている。今では弁当まで自分で作って学校に持っていっいくまでになった。ちなみに家で仕事をしているデュオの分の弁当も作っていく。作っておかないとパンや野菜をそのまま食べたり、食べるのが面倒だと何も食べないでいるからだ。
作っておいても何かに集中しているとヒイロが帰宅するまでずっと作業していたりするので、あまり意味が無いような気もするが…。
近所の人に頼まれていたテレビの修理を終え、デュオはバイクの荷台にテレビをくくりつけ一休みをしていた。時間はもうすぐお昼といった所で、ヒイロが作ってくれた弁当とにらめっこしながら考えを巡らせている。
―――いつもと同じ場所で食べるのも飽きてきたな…。
この程度の悩みだがデュオにとっては深刻だった。
何せヒイロが来る前は修理のお礼(デュオは簡単な修理だとお金はもらわない)だと言ってお客さんの家でご馳走になったり、外食ですませてしまったりしていたが、今はヒイロが昼にいない時は毎回弁当を作っていくので家にこもりがちになってきた。たまに近所の公園などにも行くのだが、ベンチに座り1人で弁当を食べるのは何となく寂しい。
一瞬、食べないでもいいか…と思ったが最近食べないでいるとヒイロのお小言が飛んでくる。もう聞きあきたのでそれは勘弁してほしい。中身を捨てて食べたことにするのは食べ物の大切さを知っているデュオにはもってのほかだ。
ぐるぐる同じ事を考えていたときパッと閃いた。
そうと決まれば行動の速いデュオはさっさと弁当をリュックにつめ、まずはテレビを届けるためにバイクにまたがった。
(うーついじいさんと話し込んじまったぜ…。早くしないと昼に間に合わない!)
少しだけ重くなったリュックを背負いバイクを飛ばす。目的地はヒイロのいる学校だ。
(どーせあいつの事じゃ友達もいないだろーし、1人黙々と飯食ってんだろ)
孤独に弁当を食べているヒイロを思い描きプッと吹き出してしまう。
裏道を使って何とかお昼前に学校に着いたデュオは、駐輪場を探しながらヒイロに電話をかけるが直ぐに留守番電話になってしまい繋がらない。
校舎の外にちらほら学生らしい人がいるので授業が終わっているかと思ったがまだだったらしく、ようやく見つけた駐輪場にバイクを停めて授業が終わるまでどうしようかと思っていると携帯が鳴った。
「もしもーし、お前どこにいるんだ?」
「…学校」
「そんなことは分かってんだよ!学校のどこだっつってんの!」
「なぜそんなことを聞く?」
「1人寂しく弁当を食べてるだろうかわいそーなひーろさんのために、このデュオ君が一緒に弁当を食べてやろうと思ってな」
ヒイロは余計なお世話だという言葉を飲み込んで、そこに行くから待ってろと一言いって電話を切った。
「あいつ俺の居場所わかってんのかよ…」
一方的に電話を切られたデュオは呆れて今は何も言わない電話を見つめたが、ここじゃ見つけにくいかもと思い校舎の出入口であろう場所へと向かう。キョロキョロと校舎から出てきている人を眺めながら歩いていると、ヒイロがデュオに気が付き走ってやってきた。
「ようヒイロ!良くここがわかったな〜。場所も聞かないで電話切っちまうから心配したぜ」
へらへらと笑いながら手を振っているデュオに聞こえるようにわざと大きなため息をつくが、嫌みが通じなかったのか気にしていないのか、どこで食べる?と何もなかったように聞いてくる。
「向こうに学生ホールがある、それか学食か・・・」
「まあ食べる場所はヒイロに任せる。とっとと行こうぜ」
学生ホールへ向かう途中デュオはいきなり立ち止まりヒイロの腕を引っ張った。
「ヒイロ!あそこの芝生が良い」
ついさっき場所は任せると言ったばかりなのにヒイロを芝生の方へと連れて行く。芝生の周りに置いてあるベンチは既に他の生徒が座っているので芝生に直に腰を下ろし、デュオはリュックからすぐに弁当を取り出した。
ヒイロもそれに続いて弁当を出すと、何が楽しいのかにこにことこっちを見ているデュオと目が合う。
「さっきテレビの修理したらさ貰ったんだ」
とみかんをヒイロに渡す。
「なんかさあよくホームドラマみたいなのである家族でハイキングみたいだな」
手に取ったみかんを見つめるヒイロに笑いかける。
その笑顔になんだか気恥ずかしくなったヒイロは、デュオから顔を背け弁当を食べ始めた。もくもくと食べているヒイロに、デュオは今日あったことなどたわいない話をしながら弁当をつついている。
こんなにゆったりと流れる時間は、ちょっと前まで生きるか死ぬかの戦いの中にいた2人にはあり得なかった。今までの事を思い出しちょっと感傷的になっているヒイロの横で、空になった弁当箱にみかんの皮をつめ口の中一杯にみかんをつめたデュオがひと伸びして芝生に寝っころがる。
「デュオ、行儀が悪い。きちんと食べてから寝ろ」
もぐもぐと口を動かしながらまあまあと手を振るデュオにヒイロは眉をしかめた。
「地球だったらもっと気持ちがいいだろうな」
オペレーションメテオで初めて降りた地球のことを思い出しているのか、デュオの視線は遠くを見つめている。
「なら今度の休みに地球に行ってみるか?」
いきなりの発言にデュオは目を見開きヒイロの方へ視線を向けた。
「マジで言ってんの・・・?」
「俺はいつでも本気だ」
きっぱりと言うヒイロにデュオはプッと噴出してしまう。むっとした顔になったヒイロにデュオはごめんごめんと軽く謝ると視線を空に向けた。
「地球か・・・どこがいいかな。お前が休みになるの楽しみに待ってるからさ・・・」
それだけ言うと大きくあくびをして、色々な地区を思い浮かべながらデュオは目を閉じた。そしてすぐに寝息を立て始める。
そのうち昼休みを終える鐘の音が聞こえてきたが、気持ち良さそうに寝ているデュオを見たヒイロはたまには良いか、とその日初めて授業をサボったのだった。